2018年1月 4日
肝臓の病気というと、お酒やウイルスが原因というイメージをお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、ほとんどお酒を飲まなくても脂肪肝になり、さらに、肝炎、肝硬変と進行する肝臓の病気もあります。今回はこのお酒と関係のない肝臓の病気「非アルコール性脂肪性肝疾患」について紹介します。
アルコールを飲まない、飲んでも肝障害をきたさないとされるアルコール20g未満/日(日本酒換算1合未満/日)で、脂肪肝を認め、他の肝疾患を除外した病態を非アルコール性脂肪性肝疾患といいます。この多くは、肥満、糖尿病、脂質異常症、高血圧などを基盤に発症し、2つの種類があります。
その一つは、肝臓に単に脂肪がたまっている状態で、病態が進行しない非アルコール性脂肪肝(NAFL:ナッフル)です。もう一つは、脂肪肝に炎症が起こる非アルコール性脂肪肝炎(NASH:ナッシュ)といわれるものです。炎症が慢性的に続き、肝臓の組織が線維化し、NASHの1~2割が肝硬変へと進み、更にその一部は肝がんに進行するといわれています。このNASHは、ウイルス性肝炎に次いで肝がんの原因となっているため、特に注意が必要です。
(1)NAFL
幹細胞の中に単に脂肪がたまっている状態で進行しない
動脈硬化・心筋梗塞・脳卒中
などの危険が高まる
(2)NASH
脂肪肝に炎症が起こり幹細胞が壊れ、進行性である
肝硬変・肝がん
などの危険が高まる
◇肥満
最大の原因は肥満です。消費するエネルギーよりも摂取するエネルギーが多くなると、余ったエネルギーは肝臓に運ばれて中性脂肪になります。一部は血液に乗って全身に運ばれ処理されますが、処理しきれなかった中性脂肪は肝臓についてしまいます。
◇ダイエット
急激なダイエットも脂肪肝の原因になります。肝臓から中性脂肪を血液中に送り出すのに必要なものが超低密度リポたんぱくです。急激なダイエットでは、栄養のバランスが崩れ、たんぱくが不足するため、超低密度リポたんぱくも不足し、肝臓に中性脂肪がたまってしまいます。
◇閉経
閉経後の女性は、ホルモンの影響で脂肪肝になりやすいことがわかっています。
まずは食習慣や運動、睡眠など生活習慣を改善することが大切です。肥満気味の方の場合、NAFLの改善には減量が欠かせません。食事運動療法で7%痩せると、NASHは改善するといわれています。
しかし、自己流のダイエットでは、逆効果になってしまう場合もあるため注意が必要です。
<<食事療法>>
カロリーを制限した低カロリー食とします。一日の摂取カロリーを、標準体重×25~35kcal(家事・軽労働25 kcal、肉体労働30 kcal、重労働35 kcal)とし、高蛋白低脂肪食がお勧めです。食事回数や食事時間が不規則な方や、間食をする方は、食生活を見直してみましょう。
<<運動療法>>
運動療法を行うと肝臓の脂肪を効率よく減らすことができます。週3~4日、1回30~60分、軽く汗をかく程度の有酸素運動がお勧めです。仕事などで運動時間がなかなかとれないという方は、職場内では階段を使う、通勤時に歩く距離を増やすなど、日常生活の中で動く時間を増やしましょう。
参考:NAFLD/NASH診療ガイドライン2014
きょうの健康2016年5月号
(健康づくり推進部 上松 容子 2018.1)