乳がんは、女性の約11人に1人が発症すると言われ、成人女性が最も注意すべき病気の一つです。乳がんのことをあなたはどの程度ご存知ですか?
今、乳がんは毎年約4%の割合で増えています。その主な理由にライフスタイルの欧米化があげられていますが、そのスピードをはるかにしのぐ勢いで増加して、女性がんのトップになってしまいました。(右図)しかも家庭では中心的な位置にある40歳代がもっとも発生率が高くなっています。
ただ、乳がんは早期に発見すれば完全に治る病気です。いたずらに心配することなく、また侮ることもなく、正しい知識を身につけ、それを実行することが大切です。そのキーワードは「定期的なマンモグラフィ検査」と、機会があるたびに自分の乳房を触ってみる「自己検診=Touch yourself」の2つ、と思ってください。
乳腺は乳汁をつくる小葉とそれを乳頭まで運ぶ乳管が木の根のようになっていて、それを支える組織でできています。(右図)乳房はこの乳腺を脂肪が包み込んで軟らかさを作っています。
乳がんはこの小葉と乳管の中に発生する悪性腫瘍ですが、日本人の場合は乳管から発生する「乳管がん」が多いです。
乳がんの症状はシコリ、乳頭からの分泌、乳頭の陥没、皮膚のくぼみ、脇の下のシコリなど実にさまざまですが、乳がんの95%以上はシコリで発見されています。乳がんは乳管から発生して管を破り、周囲の乳腺や脂肪まで進行した場合に、シコリとして皮膚の上から触れるようになります。この乳腺や脂肪がある周囲組織には血管やリンパ管があり、それを通って全身へと広がっていく可能性が出てきます。
乳がんで命を落とさないためには、がんが乳管内に留まっているうちに取り除いてしまうことです。このようながんを「非浸潤がん」といい、周囲組織まで進んだ「浸潤がん」と区別します。(左図)
非浸潤がんは転移をしないため、再発の心配はしなくて良いがんと言えます。マンモグラフィはこの非浸潤がんを発見できる検査なのです。
乳がんの発生には、環境的な要因と遺伝的な要因があると考えられています。乳がんにかかりやすい女性の「ハイリスク」には、以下のような報告があります。このようなハイリスクの人が、必ず乳がんになるわけではありませんが、そうでない人に比べると乳がんになる確率が高くなります。積極的に定期検診を受けましょう。
ハイリスクにあてはまるのは、こんな女性です。
1.11歳以下で初経のあった人、閉経が55歳以降の人(月経がある期間が普通の人より長い)
2.未婚の人、たとえ結婚していても未産婦の人
3.35歳以上で初産を経験した人
4.標準体重を2割以上超えている、肥満の人(とくに、閉経後の肥満)
5.母親・姉妹・娘などの近親者に、乳がんになった人がいる人
6.更年期にホルモン剤を常用している人